香り立つ手紙

手紙が好きです。

とある瞬間の情景やシーンの連続が瑞々しい感情を伴って切り取られ保管されている様は、まるで香りの小瓶のよう。2年前の晩秋、クララ・シューマンの書簡集をはじめて手にしたとき、本から香りが立ち上るような感覚を覚えました。

思慮と推敲を重ねながらも削ぎ落されすぎていない冗長さ、語らない潔さや余白も好きです。その時その時の、書き手の息づかいや鼓動までが、ページをめくる手をから振動として伝わってくる気がします。

クララの手紙からは家族や友人、そして自分自身に対する誠実な姿が映し出されます。穏やかで愛情にあふれ、ときに的を得た鋭い文章は、相手に偽りの同調を与えるものではなく、相手への真の尊重と自身への尊厳が表明されています。

演奏家としての情熱や覚悟が静かに綴られ、派手な演奏を求める聴衆たちを前に、バッハ・シューマン・ブラームスなど静かで内面的な音楽境地を守り、作曲家と聴衆の心の架け橋になることを願ったクララ。

誤解を恐れずにいうならば、1st Collectionの香水は絶望の淵にさまよい、深い悲哀の中でも静かに立ち上がり、生き抗うことを選んだ女性たちへのレクイエムです。

Myrtestränen ミルテの涙

BLISS Natural Perfumery 1st Collection #3はクララ・シューマンに捧げる香水です。

12月1日(日) 新作香水 Myrtestränen ミルテの涙 <ミュルテュストレーネン> 御披露目会では、クララにゆかりのある音楽作品を赤尾明紀さんのフルートと徳力清香さんのピアノアンサンブルでお送りします。

今回の演奏会では、曲目の合い間にクララの書簡集も朗読させていただくことになりました。美しい言葉で綴られたクララの手紙を音と香りに乗せてお届けできたらと願っています。

写真は白鷺美術/巽勇太さん撮影。会場もアンティークのコレクションも素敵な場所です。

ご予約/お問合せはBLISS/blissnaturalperfumery@gmail.com まで。

石川県かほく市に所在する西田幾多郎哲学記念館にて。
「哲学の動機は驚きではなくして深い人生の悲哀でなくてはならない」(西田幾多郎)