アーカイブとして、調香ワークショップ×作曲家シリーズ 各回の開催レポートをお届けします。第5回は2023年12月2日に開催したSchubert シューベルトの音楽と調香ワークショップ。
6月から始めた調香×作曲家シリーズも季節は冬へと巡りました。
シューベルトは音楽を愛する一家に生まれ、家族で四重奏を演奏し、ウィーン少年合唱団の前身・宮廷少年合唱団では変声期を迎えるまでボーイソプラノとして活躍していました。イタリア出身の宮廷楽長サリエリに多くを教わりながらも、モーツァルトやドイツ語の詩への敬愛は募り、後にリートというドイツ歌曲を誕生させます。今回は歌曲を中心に、シューベルトが辿った道のりをピアニストの徳力清香さんにご案内いただきました。
シューベルトの旋律はその美しいメロディーだけではなく、まるで抒情詩のようにその時の情景や感情が生き生きと描写されいます。シューベルトの音楽は言葉を使わない詩や物語そのもの。≪鱒(ピアノ五重奏)≫の中で描かれる鱒が泳ぐ様子は背びれをヴィオラが、尾びれをコントラバスが奏で、きらめくように流れる小川の水しぶきの音がピアノの鍵盤から零れ落ちるように聞こえてます。今回のワークショップ用に用意した「鱒のアコード」は川を遡上していく鱒の力強さをグレープフルーツとブラックスプルースで表現したものでした。
≪菩提樹(冬の旅より)≫や≪セレナーデ(白鳥の歌より)≫に象徴される、一音ずつ、美しいメロディーの奥に潜むゆっくりと展開する低音の指使い。≪セレナーデ≫で知られる白鳥の歌は亡くなるその年に作曲され、死後友人たちにより編纂された歌曲集ですが、あまりの悲愴で絶望感の漂う作品に困惑する友人たちに向かって、シューベルトは「君たちにもそのうちに分かるよ」と言い残します。恋に破れ、持病が悪化し、死と生の瀬戸際に立ちながら、運命の流れに抗わず深淵に身を委ねるシューベルトの姿をタンジーブルー、オークモス、ヴェチバーなどの重層的なベースノートで韻を踏むように重ねました。
BLISSFUL POTION WORKSHOP
調香ワークショップ×作曲家シリーズ
第5回シューベルト
Franz Peter Schubert (1797-1828)
日時:2023年12月2日(土)14時00分-16時00分
会場:gartenガルテン(金沢市東兼六町1-26)
≪野ばら≫
≪鱒(歌曲/ピアノ五重奏)≫
≪アヴェマリア≫
≪菩提樹(冬の旅より)≫
≪セレナーデ(白鳥の歌より)≫
Keyword:
詩情
友人(シューベルティアーデ)
歌