パフューマリー通信 Vol.10

新年最初のパフューマリー通信は、題して『友人との約束とBLISSの夢』。

私の人生を大きく変えた友人との出会いは2003年秋。タンザニアでの生態系調査を終え、英国に戻って間もない頃でした。 

『友人との約束とBLISSの夢』

大切な友人(以下、P)との出会いは大学2年生のとき。クライミング合宿に参加したときでした。背が高く髪は金色、瞳の色は光によって緑や灰色に変わり、社交的で皆に優しく、周りの学生よりもずっと大人びていました。大学には社会人学生も1割近くいましたが、Pの存在はレジェンドでした – 10代のとき白血病に罹り長い間闘病生活を送っていたこと、退院後は働きながらボランティア活動をし、開発学を学ぶために大学に入ったこと。週末は国際環境NGOグリンピースのアクティビスト(原子力発電所に登って『NO NUKES!』の垂れ幕を掛けていた)、ロックバンドのドラマーでもありました。

Pから沢山のことを教わりました。ベジタリアン/ビーガンという選択肢、オーガニック野菜の宅配ボックス、洗剤を使わずに食器を洗う方法、オーガニックのキウイは皮ごと食べる(今もこれだけは真似できない)、パーマカルチャー(持続可能な農ある暮らし)、瞑想・ヨガetc. Pの影響を受けて、私は次第にビーガンになり、パーマカルチャーを学ぶためにスペインへ研修に行き、実践している英国の農家を訪ねているうちに、ウェールズの小さな農園で住み込みで1年働くことになりました(パフューマリー通信Vol.2参照)。

日本へ帰国後もやはりPの影響色濃く、(日本の)グリンピースでボランティアをしていましたが、”anti-“何かに反対する活動には私は向いていないと分かり、複数のNGO/NPOでのボランティアやインターンを経て会社員に。その間、Pはビックベン(英国の国会議事堂にある時計塔)にも登っていて、『Change Politics, Not Climate』(気候ではなく、政治を変えろ!)と掲げた大きな緑色の旗を振り、英国の全国ニュースになっていました。Pの活躍を聞くたびに大手町で会社員として働く生活に疑問が拭い切れない私がいました。

P との最後のやりとりは2011年3月。福島第一原子力発電所第3号機が炉心融解(メルトダウン)・水素爆発した直後でした。”I hope you are OK” というタイトルで送られてきた短いメッセージ。当時の私よりももっと真剣に福島のことを案じてくれていたのだと振り返っています。

2014年6月にPが亡くなったと知ったのはその数か月後でした。グリンピースを『卒業』したPは、英国の石けんメーカーLUSHでアフリカや中南米など現地でサステナブルな原料調達を手掛け、パーマカルチャーを軸にしたコミュニティづくりや農業指導を行っていました。農業指導のために出掛けたガーナでマラリアに感染し、4カ月間の闘病生活の末に安らかに魂が解き放たれたとPのパートナーがSNSに綴ってくれました。

常にPを追いかけていた私でしたが、あるとき私はPが轢いた道ではなく、私自身の道を進もうと思い直しました。その答えが自然香水をつくることでした。

ひとしずくの香水が、自然とひとの調和へと導き、癒しと活力、勇気を与える。美しい循環の一翼を担えるよう、2023年も香水つくりに向き合ってまいります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2023年初めての新月の今日。

新しい一年が皆様にとって素晴らしい年となりますように、心よりお祈り申し上げます。

BLISS Natural Perfumery

茂谷 あすか

p.s. パフューマリー通信を開始当初、10回の連載を目標に掲げておりましたが、今後も新月の通信を続けていきます。お付き合いいただけましたら大変嬉しいです。

お正月恒例の金沢市消防団の出初式。金沢城のお堀から水を組み上げて放水します。