パフューマリー通信 Vol.18

今日は乙女座の新月。春の種蒔きから育まれた、実り豊かな季節の始まり。今日のパフューマリー通信では、BLISSが香水に使用するエタノール原料の産地&ラボ訪問、そして、いよいよ次の満月の夜に開催する映画『ハンナ・アーレント』上映会について。

『エタノールの産地を巡って:奥州ラボ訪問』

BLISSが香水に使用するエタノールは岩手県奥州市で有機栽培されたファーメンステーション社が製造するお米由来の発酵エタノールです(パフューマリー通信 Vol.12参照)。

先月末、初めて現地の水田とラボに伺いました。

エタノール原料自体は珍しいものでもなく、化粧品原料として多くの化粧品に使用されている成分のひとつ。日本で流通する工業用アルコールの多くはブラジル産サトウキビ由来の粗留アルコールを国内で精製したもの。今回の視察では実際のエタノールのもととなる水田の場所まで確認することができました。エタノール原料の産地をここまでトレースできるということは、化粧品業界では本当に稀なことだそうです。

ここがBLISSが使用するエタノール原料の水田!

ファーメンステーション社は、サーキュラーエコノミー(循環型経済)という言葉が生まれる以前から、地域での循環を作り上げています。休耕田を活用したエタノール製造から始まり、発酵・蒸留後の残留物であるもろみ粕を石けんの原料やニワトリ・牛のエサに使用。家畜の糞を肥料にして食用米や野菜、ヒマワリを栽培し、更にはヒマワリの種から搾油し化粧品原料へーー。今回の視察ではヒマワリ畑にも伺いました。

日本で高濃度(発酵)アルコールを製造する事業者は殆ど無く、前例の少なさから事業免許を取得するのに苦労したと仰っていた代表の酒井さん。酒井さんは東京と奥州を行き来し、奥州ラボでは少数精鋭のスタッフの方々が独自の装置を用いて、発酵・蒸留技術を磨いておられます。ラボでは微生物の発酵による「ぷくぷく」も聞きました!

化粧品表示成分名では「エタノール」としか記載されないもの。今回の視察で原料がどのような場所で、どのような人々によって造られているのかを肌で感じました。BLISSの香水をお使いくださる方々が、循環する世界の一翼を担っていただけることに、とても勇気付けられてています。

『ハンナ・アーレント映画上映会』

いよいよ次の満月の夜に迫った映画『ハンナ・アーレント』上映会。パフューマりーでは、事前予約いただいた方にお渡しする新作香水のミニサンプル「パルファン Amor Mundi」の準備をしています。ムイエットを兼ねた栞(しおり)と一緒にお渡し予定です。

栞には、若きアーレントが恋焦がれた師、ハイデガーから贈られた言葉を活字に起こしました。

「わたしがあなたを愛するとは、あなたがあること、あなたのあるがままを、私は欲する、ということだ」。

『アーレント=ハイデガー往復書簡集』より

「あるがまま」のあなた、嘘偽りのない「ほんらいの」あなたを欲する、というハイデガーからの愛の告白は、ユダヤ人であるがゆえに「あるがまま」の存在を世界から否定された彼女にとって、どれほど大きな支えとなったことでしょう。あなたに存在してほしい――この他者に対する力強い肯定は、やがて「Amor Mundi(世界への愛)」へとのびやかに広がっていきます。「世界への愛」は、崩壊しつつある世界を目の当たりにしつつも、他者とともに生きる世界の存続を願った、思索者ハンナ・アーレントを象徴する言葉です。

映画『ハンナ・アーレント』上映会

日時:2023年9月29日(金) 18:30開場 19:00開演(21:00終演予定)

会場:金沢21世紀美術館 シアター21

入場料:1,000円(事前予約の方に香水サンプル贈呈)・当日券有

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今日も新月の朝の通信にお付き合いくださり、ありがとうございます。