パフューマリー通信 Vol.2

BLISSの自然香水へのこだわり。

それは有機栽培種・野生種の天然香料・原料を用いること。

そうでなければBLISSの存在意義はありません。

『なぜオーガニック?』

香り分子はただの化合物ではなく、生命力のエッセンス。

錬金術師たちが「植物から第五元素を取り出すためには、その植物が良い状態で育てられなければならない」と考えていたように、BLISSでは大切にされ、のびのびと育った植物原料にはきっと素晴らしいエネルギーが宿っていると感じています。

私は英国で環境学を専攻していた大学時代、農業が世界の環境破壊の大きな要因であると学んだことがきっかけで、有機農法に興味を持つようになりました。大学を休学してウェールズの小さなオーガニック農園で1年間住み込みで働いたこともあります。オーガニックの野菜や果物の、心と体が喜ぶ美味しさ、そして、土に触れ、種をまき、植物を観察し、自然のリズムと共に生き、仲間と一緒に労働と収穫の喜びを知ることは尊い経験でした。

『オーガニックの天然香料との出会い』

大学卒業後、民間企業で国内外の環境事業に従事していましたが、土から離れた生活に違和感を感じ、「満たされない何か」を埋めるように週末はボランティアや勉強会、市民農園に通う日々を送っていました。そんなある日のこと。職場近くのオーガニックカフェでエッセンシャルオイルに出会い、一瞬で香りの豊かさに心奪われました。

「香りを通して瞬時に自然と繋がることができる。」

「自然は理屈抜きに、素晴らしい恵みと豊かさを与えてくれる。」

当時自然から離れていた私にとって、天然香料との出会いは、脳天を打ちのめされるようなセンセーショナルな事件でした。以来天然香料の虜となり、少しずつ買い揃え、調香を学び、今日に至るまで調香の仕事をさせていただいています。私にとって調香師とは自然と向き合い、本当の幸せ・豊かさを問い続け探求する職業です。

『BLISSで取り扱う原料の品質基準』

BLISSでは仏国の天然香料メーカー複数社からオーガニックの天然香料を仕入れています。取り扱う植物原料は全て自社農園・契約栽培によるもので、価格はオーガニックではない慣行栽培由来原料と比べて割高ですが、素晴らしい品質のものばかり。BLISSは小さなパフューマリーなので、大きな香水メゾンのように㎏単位で購入することは殆どなく、100g単位で購入し、香料はパフューマリー内のワインセラーで保管・15℃以下の一定の温度で管理しています。

原料は信頼できる香料会社から購入することが第一の鉄則。サンプルの香りの確認は勿論のこと、原産国、INCI名(国際命名法に基づく化粧品の成分表示名称)、COA(試験成績書)、SDS(安全性情報)、製造年月日などの供給者側による情報提供の有無も選定時における重要な判断基準です。薬機法において原料の品質に責任を負うのは化粧品製造販売業者。香りのクオリティだけでなく、信頼性・安全性ある原料を常に求めています。

なお、ジャスミン、オークモス、トンカビーンなどの繊細な芳香植物は蒸留法では得られず、溶剤抽出法を用いて得られます(アブソリュートと呼ばれるもの)。そのため、原料は有機栽培種・野生種の植物であっても、製法によりアブソリュートはオーガニック認証を得ることはできません。アブソリュートは蒸留法では得られない芳香成分も多く含み、BLISSにとって調香には欠かせない、オーガニック認証が取得出来無くとも大切で魅力的な香料です。

新月のパフューマリー通信にお付き合いくださり、誠にありがとうございました!

ご感想やご意見などございましたら、お寄せいただけると大変嬉しいです。

次回は調香についてお話させていただく予定です。