今年最後の新月の朝。この一年の振り返るひとときに加えて、射手座の新月は自由な旅人のように新しい冒険への想いが芽生えるときかもしれません。
『Winter Wishes 2023』
調香棚には、次はいつ出会えるか分からない、一期一会の香料コレクションがあります。Mitti, Amber, インド・マイソール産の白檀、スリランカの桂皮(精油)、ブラジルのローズウッド… 。また、熟成するほどによい香りとされる香料、10年もののパチュリなども、普段は眺めているだけの香料もあります。
Winter Wishes は英国で過ごしたクリスマスの時期の思い出を乗せて、オレンジ系のシトラスノートとスパイスノートをベースに調香した冬の香りです。毎年冬が始まる前にほんの少し調香しては、12月のその時々のご縁にお渡ししています。処方は毎年少しずつ変えていて、今年は一期一会の香料の中でもマイソール産白檀を1滴加えました。今年発表した1st Collection 2作目 『Amor Mundi』のテーマも忍ばせて、スパイスの煌きの奥に深い滋養を讃えるような香りに仕上がりました。ムイエットをお送りすることもできますので、ご興味あるかたはご連絡くださると嬉しいです。
『サンダルウッド』
かつて白檀といえば、「インド・マイソール産」と代名詞になっていたほどで、絹のような滑らかさと持続性を持つ香りは大変重宝され、オリエンタルの香調には欠かせない香料でした。しかし、白檀は成長するまでに数十年と植林に向かないこと(白檀は半寄生植物)、香料以外にも仏像用の木材としても大変人気で乱伐が続き、インド政府による輸出規制(原則輸出禁止)によりインド・マイソール産の白檀精油は2010年代以降、香料市場から消えてしまいました。
インドの白檀とは品種が異なりますが、オーストラリアやニューカレドニアなどでサンダルウッドの栽培が広まり、数年前からはニューカレドニア産のサンダルウッド香料が香水業界では高く評価されています。ニューカレドニア産白檀は香りにマイソール産と比べてフレッシュ感が残るものの、香りの艶やかさや滑らかさ、ほんのりとした甘さには奥行きがあり、BLISSでもニューカレドニア産白檀を使用しています。
香りのフレッシュ感。余談ですが、音にもフレッシュという表現が使われていることを最近知りました。今年6月から始めた調香ワークショップ×作曲家シリーズでは毎回ピアニストの徳力清香さんが選曲した作品の音源を探してくださいます。作品発表当時の作曲者の想いや当時の雰囲気を感じていただけるような演奏を中心に選んでくださるのですが、古い演奏には艶やかさや引っ掛かりのある味わいがあり、それに比べて現代の演奏はすっと耳に入ってくるそうです(聴きやすい=フレッシュ)。フレッシュとは分かりやすさ。分かりやすさも大事なのかもしれませんが、私は「分かりにくさ」も好きです。謎めいた、自分の理性や理解を越えた、そこに潜む「何か」。だからこそ、人は惹きつけられるのかもしれません。マイソール産白檀にはフレッシュではない、何か分からないもの、謎めいた魅力があります。
『Luminary 太陽と月と羅針盤 BOX』
今年8月の新月に発表した、WORDROBEとの共同ブランド Rite of Passage から自然香水『Luminary 太陽と月と羅針盤 BOX』。今日の新月に合わせて、ご予約分の発送を完了いたしました。ささやかなクリスマスのギフトとして屋久島のお塩と一緒にオリジナルブレンド精油を添えてお送りしています。人生という航海への旅路に、新しい年を迎える節目に、香りがこころつよいお守となりますように。
すぐにご発送できる分も少しございます。WORDROBEのオンラインストア、またはBLISSのアトリエでもお求めいただけます。
今年もパフューマリー通信にお付き合いくださり、誠にありがとうございました。
来年も皆様に香り豊かな年が訪れますように。
Sending you warm winter wishes.