金沢の6月の始まりはお祭りから。百万石まつりと題される3日間のお祭りは加賀藩祖前田利家公の金沢入城を偲んで開催されるもの。2日目の百万石行列には毎年利家公とお松の方の役に著名な俳優陣が招かれ、行列の終盤馬に乗って利家公に扮した俳優が現れるとまつりはクライマックスに。加賀とび行列も金沢ならではの演目で、梯子登りもさることながら私は梯子登りの際に唄う民謡「加賀鳶木遣くずし」が一番好きです。三味線の音に合わせた抜け感のある伸びやかな歌声を聞くと、金沢らしい優雅さと穏やかさを肌一杯に感じます。そして、夜金沢城公園でひっそりと行われる薪能も夢の世界に迷い込んだような幻想の時間でした。
『ペパーミント』
風のエレメントである双子座を象徴する香りはペパーミント。好奇心旺盛で、真理を見抜き、ひとつのある閃きが風のように次々に展開していきます。熱いときには冷やし、寒いときには温め刺激を与えるペパーミントの働きは頼もしいもの。ミントは湿気のある気候を好み、多様な品種があり、日本でも栽培や繁殖が盛んなハーブのひとつです。
ミントから抽出されるl-メントールは歯磨き粉やガムのフレーバーなど工業製品として多用されていることもあり、これまで積極的に調香に使用してこなかったのですが、あるとき「白」をイメージした香りを調香したときからペパーミントの新しい魅力に出逢いました。美しい装丁の写真集をただ眺めるように、滑らかでひんやりとした手触り。あるいは、青白い月の光が夜に降り注ぐように、物憂げな静かさを奏でるように。Debussy×調香ワークショップでご紹介した月のアコードはペパーミント・プチグレン・アトラスシダー・パルマローザ。ペパーミント・プチグレンの組み合わせにシトラスを少し乗せる処方もおすすめです。
ハーブとしてのミントはハーブティーや飲物だけでなく、サーモンなどの脂身の多いお魚のマリネやサラダにも、シソのようにお料理に使っています。特にお醤油ベースのドレッシングにミントを刻んで合わせるとミントの苦みもなく子ども達にも人気です。
今週末に白山麓の和田屋さんにて開催するRite of Passage 香りのイベント「香りと、読書と、白山と。」に向けてアトリエはにわかに大忙し。和田屋さんの秘密の花園のような読書室で、日常と非日常の間を行き来する香りのひとときをご一緒できること、心より楽しみにしております。
元旦の能登半島地震から5カ月。3日早朝には久しぶりに大きな地震がありました。心は能登と共に。
BLISS Natural Perfumery
茂谷あすか