先月の能登豪雨で被災された皆様に心よりお見舞申し上げます。今回の大雨による被害は想像以上に甚大で、元旦の震災による復旧や生活再建もまだまた途上であった中での出来事に胸が一層痛みます。前線で活動されていらっしゃる方々に感謝すると共に、私ができることを日々模索しています。
今日は天秤座の新月と金環日食。溜まったものが一度リセットされ、バランスを取り戻すとき。今回のパフューマリー通信では金星を支配星とし、天秤座を象徴するゼラニウムをご紹介します。
『ゼラニウム』
ゼラニウムは200種類以上の品種が存在するといわれていますが、精油が採れるのはフウロソウ科のゼラニウム。アフリカ南部が原産地で、バラのような芳香を持つ香りはヨーロッパの人々を魅了し、19世紀初頭にはフランス人によりゼラニウム精油の商業生産がはじまりました。ゼラニウムは産地によって香りが異なり、ゼラニウムの中でも最高品と称せられるのはゼラニウムブルボン。産地のひとつであるレユニオン島は南西インド洋上に浮かぶ旧フランス領の島で、かつてはブルボン島と呼ばれていました。レユニオン島のゼラニウムと競うように、20世紀初めにはモロッコでもゼラニウム精油の生産が開始され、モロッコやエジプトを産地とするゼラニウムはローズゼラニウムとして区別されています。ゼラニウムブルボンはフローラルかつフルーティーでありながら薄らとグリーンで軽やかさがあり、ローズゼラニウムは芳醇で豊潤な甘さがあります。
調香の勉強を始めた当初は甘い香調がはっきりとしたローズゼラニウムを好んで使っていましたが、調香を重ねていくうちに、ゼラニウムブルボンの魅力、特にリンゴ様の香りと表されるやわらかな酸味を愛するようになりました。現在BLISSが調香に用いるのは専らゼラニウムブルボンです。
ゼラニウムはそのままでも素晴らしい香りですが、クラリセージ(パフューマリー通信 Vol.28)やラヴェンダー(パフューマリー通信 Vol.30)のように他の香料同士を結びつける役割を持ちます。自然香水の調香ではバランス感覚に優れたゼラニウムは欠かせない香料のひとつ。アロマセラピーの見地からは心やホルモン、皮脂のバランスを保持する作用があるとされ、重宝される精油のひとつです。
今朝は冷たい雨が降っています。
今年は長い残暑が続きました。
疲れが溜まる頃。香りがリセットのきっかけとなり、新しい流れを呼び込めたら幸いです。
どうかご自愛ください。
BLISS 茂谷 あすか
Profile
1982年生まれ。幼い頃より自然を守りたいという思いを胸に高校卒業後渡英、環境学を学ぶ。2006年英国イーストアングリア大学卒業。株式会社QUICK、三井物産株式会社勤務を経て、2015年より調香の仕事を始める。2019年東京理科大学卒業。2021年石川県金沢市にてパフューマリーを設立。現在オーダーメイド・小ロットOEMの香水類・アロマ化粧品・フレグランスの製作を行う。