11月霜月朔日は蠍座の新月。ホロスコープ上では蠍座の太陽と月がぴったりと重なる日。全く私なりの勝手な解釈をすると、芯の強さがある蠍座の要素を持った太陽の力が増し、自分の魂の目的を見つめる内面の旅へと向かう日。
『パチョウリ』
冥王星を支配星とし、蠍座を象徴する天然香料はパチョウリ。苦味のあるこの奥深い香りを初めて聞いた時はなかなか受け付けられず、苦手としていた香料のひとつでしたが、嗅ぎ慣れていくうちと不思議と心が落ち着いていくことを感じるようになりました。微量に使うことで、香り全体に深みや独創性を与え、香水ではベースノートとして使用されています。軽くフローラルの香調であってもふわふわとしすぎない、大地としっかりと繋がっているような安心感を与えます。
インド原産。虫刺されやヘビの咬傷の解毒剤として名高く、防虫効果があります。ナポレオンがエジプト遠征時にカシミアのショールを初めてフランスに持ち帰り、始まったカシミア交易。カシミア製品をフランスへ輸出する際は虫除けのためにパチョウリの葉や枝を一緒に包んでいたといわれ、フランスではパチュリの香りは高級感と結びつきます。日本では漢方の生薬として親しまれてきました。
1st Collection 新作香水 #3 パルファンMyrtestränen には、ほんの微量のパチュリを配合しています。シトラス-ハーバルを基調とした清らかな香調に、大切な存在へのオマージュを奏でるようにパチョウリが低音で漂います。
『Myrtestränen ミルテの涙』
myrte =ミルテ(英マートル、和ギンバイカ)
träne = 涙
Myrtestränen は独語の造語でミルテの涙を意味します。ロベルト・シューマンが妻となるクララ・シューマンへ結婚前夜に贈った歌曲集『ミルテの花』をもとにした香水名。ミルテ(マートル)は常緑の葉と、梅によく似た白い小さな五枚の花びらをつけ、結婚式や花嫁のブーケに用いられてきました。ミルテの枝のブーケと一緒にクララへ届けられたと言われています。
涙は喜びのときも哀しみのときもそばにあり、慈しむように包み込み、美しく浄化するもの。クララの辿った道のりを想うとき、それは単なる幸福な物語ではない、超越した美しい涙でした。涙が持つもの意味するもの、それは誠実さや強さや愛であり、解の探求はこれからも続きます。
次の新月に新作香水の御披露目とともに、演奏と朗読の小さな会を開きます。演奏はフルート/赤尾明紀さんとピアノ/徳力清香さん。シューマンやブラームス、メンデルスゾーン、バッハなどクララとゆかりある作品やクララ自身による作品をアンサンブルとピアノソロでお送りします。
会場は21世紀美術館そばにある白鷺美術さんにて。白い基調と光が美しい場所です。初冬の新月の夕方、光移ろう時間にそれぞれの一年を想い馳せていただけたら。香りと音と言葉でご一緒できましたらこの上なく幸いです。
Myrtestränen ミルテの涙
クララ・シューマンに捧げる 香水と音楽と朗読の調べ
日程:12月1日(日)
出演: 赤尾明紀(フルート), 徳力清香(ピアノ), 茂谷あすか(朗読)
会場:shirasagi1F
開場/開演:15時/16時
ご予約: 3,500円(香水サンプル付)+ 1 drink order 500円
※学割(高校生以下500円引)、能登半島地震・能登豪雨による被災者・避難者の方の入場料は一部免除させていただきます。ご予約時にお申し出ください。
主催:BLISS
協力:白鷺美術
ご予約はBLISS blissnaturalperfumery@gmail.com または Messenger / Instagramチャットでもお受けしています。
急に肌寒くなりました。
雪降る前にしたいこと、しなくてはならないこと。
どうかお身体を大切にお過ごしください。
BLISS 茂谷 あすか
Profile
1982年生まれ。幼い頃より自然を守りたいという思いを胸に高校卒業後渡英、環境学を学ぶ。2006年英国イーストアングリア大学卒業。株式会社QUICK、三井物産株式会社勤務を経て、2015年より調香の仕事を始める。2019年東京理科大学卒業。2021年石川県金沢市にてパフューマリーを設立。現在オーダーメイド・小ロットOEMの香水類・アロマ化粧品・フレグランスの製作を行う。