パフューマリー通信 Vol.34

2024年最後の新月は大晦日。12月は2度の新月が廻り、今日の大晦日が殊更特別のように感じます。皆様にとって、きっと様々なことがあった1年間だったと思います。いい年だったと振り返る穏やかな今であることを願っています。

シダーウッド

土星を支配星とする山羊座を象徴する植物はシダーウッド(杉)。自身を律し、自分自身の土台となる信念は自分らしく自由に生きるために必要とされるもの。シダーウッドは地面に向かって放射的にエネルギーを放つ、第5チャクラとも関連付けられています。

シダーの語源はアラビア語の「力」より。古代アラビア半島に広く生育していた香り高いレバノン杉はソロモンの神殿造りや偶像、エジプトのミイラの棺、船の建材、寺院の薫香として多用されてきました。何世紀にも渡る乱伐の結果、アラビア半島は砂漠化し、レバノン杉は殆ど消滅してしまったと言われています。

シダーウッドには大まかに、鉛筆のような強い針葉樹の香りを持つレッドシダーと、甘い香りを持つホワイトシダーに分類されます。BLISSが調香で用いるのは、ホワイトシダーに属するシダーアトラス(アトラス杉)。アトラス杉はレバノン杉の亜種で、原産地はモロッコ。甘く、サンダルウッドにやや似た深さもあるウッディの香り良さはもちろん、香水の保留剤としてベースノートに広く使用されている香料です。

2024年を振り返って・・・

元旦の能登半島地震、9月の能登豪雨と… …。自然災害の凄まじさ、復興への遅い歩みへの歯痒さ、風化されていくことのやるせなさ、そして金沢にいる私自身への戸惑いを感じる一年でした。ひとりの力は小さくてもその意味や、できることを大事にすること。

そんな中、音楽という媒体は同じ場所にいる人々の心をひとつにする力があるとこの一年強く実感しました。演奏会を通して繋げた能登への気持ちを能登に送ることを願って、先日の新作香水の御披露目会・演奏会で集まった支援金(86,000円)は出演者の方々と相談した結果、被災地・珠洲での音楽プロジェクトに寄付いたしました。詳細は時期を改めて、またご報告させていただけたらと思います。

そして、植物たちの香りの力を信じて… …。

今年は様々な変化もありましたが、旧知を温めると共に、新しい出会いにも恵まれた1年でした。その中でも朗読と香りは今後大切に育んでいきたい取り組みのひとつで、物語と自然香水の魅力や可能性について私自身学びを深めていきたいと考えています。今読んでいるのは、イサク・ディネセン著「アフリカの日々」(今年3回目・笑)とフランソワーズ・サガン著「ブラームスはお好き」。シェヘラザードとクララと一緒に、アフリカにパリに漂っています。

新しい年が皆様にとって佳き年でありますように。
今年もパフューマリー通信にお付き合いいただきありがとうございました。
感謝と祈りを込めて。

BLISS 茂谷あすか

Profile 1982年生まれ。幼い頃より自然を守りたいという思いを胸に高校卒業後渡英、環境学を学ぶ。2006年英国イーストアングリア大学卒業。株式会社QUICK、三井物産株式会社勤務を経て、2015年より調香の仕事を始める。2019年東京理科大学卒業。2021年石川県金沢市にてパフューマリーを設立。現在オーダーメイド・小ロットOEMの香水類・アロマ化粧品・フレグランスの製作を行う。