パフューマリー通信 Vol.36

今日は魚座の新月。金沢は寒さの峠を越え、春のような陽気に雪解けが一気に進んでいます。寒さと冷えで縮こまっていた身も心も、太陽のやわらかな光で解きほどけていくのを感じます。立春の暦を過ぎてから漸く春の訪れの実感。

Melissa メリッサ

数少ない魚座を象徴する芳香植物のひとつとして挙げられるのがメリッサ(別名レモンバーム)。地中海沿岸を原産とするメリッサはギリシャ語「蜜蜂(Melittina)」に由来します。古代ローマ帝国ネロ皇帝の治世下、医師として活躍し、のちに薬理学・薬草学の父として知られるディオスコリデスは「蜜蜂が好む植物」と記録しています。

シソ科であるメリッサの栽培は簡単ではあるものの精油の含有量が極端に少なく、最も高価な香料のひとつ。ローズに匹敵するほどの価格が付きます。高価であるため偽和されやすく、安価なメリッサにはシトロネラやレモングラスなどの香りが添加されています。フランスの香料メーカーでもメリッサ香料を単体で販売しているところは殆どなく、実際はMelissaを”主原料”として蒸留しているものです。 アトリエの調香棚にある真正メリッサは10年以上前に入手したもので、貴重すぎて殆ど使用していません笑。レモン様の、蜂蜜のような甘い蜜の香り。時を経た今だからなのか、熟成した香りが漂います。

アトリエのある長町エリアは長町武家屋敷跡野村家庭園など金沢の観光名所のひとつ。先日、台湾の方からお問い合わせをいただき、金沢滞在の合い間にアトリエにお越しくださいました。香水が好きで、旅先でニッチブランドの香水を探して旅していらっしゃるとのこと。私も香りの旅に出たいと常々思っていましたが、香りの旅先に選んでいただく喜びを初めて知りました。

明日から3月。皆様にたくさんの春の祝福が訪れますように。

雪の日曜日の早朝。広坂は金沢の中心部に位置しますが、ひとり占めできてしまう静寂な銀世界がありました。

BLISS 茂谷あすか

Profile 1982年生まれ。2006年英University of East Anglia卒業。株式会社QUICK、三井物産株式会社勤務を経て、2015年より調香の仕事を始める。2019年東京理科大学卒業。2021年石川県金沢市にてパフューマリーを設立。自然香水の製作を行う。