パフューマリー通信 Vol.39 

双子座新月のパフューマリー通信。金沢では新緑も色濃くなり、梅雨入り前のさらりとした晴天が続くようになりました。春の浮き立つような感情もバランスを取り戻し、爽やかな風をまとう季節。

入浴と香り

私は蟹座生まれで、月星座は魚座と水のエレメントの影響のためか、水が好き。金沢の街が好きな理由のひとつも、街の中心部(かつての城下町)に用水が張り巡らされているところです。水の流れに沿って氣も流れているのか、気が滞っているときは犀川沿いを散歩したり、犀川に掛かる橋の上で夕陽を見にたり。お天気が悪い晩秋~冬はお風呂で自分を取り戻していました。

さて、前置きはここまでに。

入浴と香りの歴史は古く、最も有名なのは古代ローマの浴場。紀元前4世紀、古代ローマの都市には11か所の公衆浴場と850以上のプライベート浴場が存在していたとあります。公衆浴場は社交場としても機能し、収容人数が2千人近くの大規模なものも珍しくはありませんでした。

世界各地の古代文明が栄えた古代エジプトやギリシア、ソロモンなどの国々でも、薫香だけでなく、香りを施した香油や香粧品は権力者、僧侶、富裕層を中心に日常的に使われていましたが、古代ローマでは香りは入浴に結びつくものでした。

ローマの民衆たちは、店で売られている香油や香り付きワインを買い求めて陶器製やガラス製の容器に入れて持ち運び、浴場でそれらの香り製品を使用するのが習慣でした。3種類の浴槽では(ぬるま湯/熱いお湯/水風呂)、香りを使い分けたり、中には足の裏まで香りを塗り込んでいたと言われています。

古代ローマでは地中海沿岸を中心とした広域の支配圏・交易国により、ローズ、フィグ、アヤメ、水仙、サフラン、オークモスなどの他、シナモン、カルダモン、ナツメグ、ジンジャー、沈香、スパイクナードなどアジア圏からの香料も流通し、調香師たちが活躍していたことが想像できます。

香りの歴史については、パフューマリー通信 Vol.6(前編:古代~中世), Vol.7(後編:ルネサンス~現代)でもご紹介しています。

入浴と香り。香りのブランドRite of Passageでは昨年6月に試作発表したバスソルトの商品化を温めています。日常と非日常のあわいをたゆたう香りの入浴儀礼。試作品も実は販売しておりますので、ご興味ある方はBLISS/blissnaturalperfumery@gmail.com までお問い合わせください。香りと共にする通過儀礼にささやかなお手伝いができましたら幸いです。

BLISS 茂谷あすか

Profile
1982年生まれ。2006年英University of East Anglia卒業。株式会社QUICK、三井物産株式会社勤務を経て、2015年より調香の仕事を始める。2019年東京理科大学卒業。2021年石川県金沢市にてパフューマリーを設立。自然香水の製作を行う。