2026年1月睦月新月。
新しい年が明けました。
みなさまにとって香り高き一年となりますように。
年末年始は帰省のため金沢を不在にすることが殆ど。そのため、私にとって金沢の新春恒例行事は1月初旬に金沢城公園で開催される防出初式です。今年は強風のため加賀鳶はしご登りは中止となりましたが、金沢市消防団による一斉放水は予定通り決行され、消防団の一員として参加していた義弟の無事を祈るように見入りました。特別職の非常勤公務員という位置付けであるとはいえ、有志住民による消防機関の存在は日本特有そのもの。2024年元旦に起きた能登半島地震では義弟やパフューマリー向いに住む消防団長から出動の様子を聞いていました。消防団の歴史や活動を調べていくと知らないことばかり。一方で、こうしていつも脱線してしまいます。そんなパフューマリー通信ですが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
グルマンノート
グルマンノートとは仏語で美食家を意味するGourmand(グルマン)に由来し、甘いお菓子やデザートを連想させる、美味しい香調です。その発端はファッションデザイナー/ティエリー・ミュグレーが1992年に発表した香水「ANGEL(エンジェル)」。ANGELはミュグレーが祖母宅を訪ねたときの台所の匂い、ホットチョコレート、お菓子、遊園地、ストラスブールの大聖堂などミュグレー自身の幼少期の思い出をもとに導かれた香りで、キャラメルのフレーバーにバニラとパチョウリを合わせたグルマンノートを組み込みました。香水史上前例のない、美味しさを打ち出した香水の大ヒットにより、グルマンノートという新しい香調が誕生、確立されました。天然香料のグルマンノートにはバニラ、カカオ、ビーワックス、コーヒーなどが分類されます。
「美味しい」には後に人生の転機となる特別な日に密接に結びつくものもあれば、「美味しい」記憶には日常的に営まれ、あたたかで、しあわせの本質が潜んでいます。そのことを強く実感したのは、Rite of Passageが一昨年秋に開催した食と香りのワークショップでした。
「食にまつわる香りの記憶」をテーマに、そのときの食事の風景やエピソード、呼び起こされる感情を思い起こしながら、香りで記憶の再現を試みた調香ワークショップ。ワークショップ参加者の方々が語ってくれた祖母が作ってくれた郷土料理や夏休みの朝ごはんの匂いのお話は、まさしくミュグレーがANGELに幼少期の思い出を詰めたように、幸せな記憶を運ぶものでした。
今でこそグルマンノートは香りのピラミッドにおける位置を確立していますが、美味しさには世界共通の普遍的な価値観、日常の幸せが記憶されています。
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年末年始よりサンプル制作の日々が続いていましたが、ようやくひと段落。今は3月の企画に向けて準備を進めています。そのひとつがアーレントに関するイベント。昨年、同じ金沢・長町に所在する書店6号室とアーレントの朗読と調香ワークショップ「アーレントからはじめる言葉と香りの[はじまり]」を数回にわたり開催しました。その発展として、2026年3月10日(火)、共生×場所×制作<アート>をテーマにゲストをお招きして講演、ディスカッションを行う予定です(会場:金沢21世紀美術館シアター21)。
同じく3月に「海」をテーマに香りとして企画展に参加予定です。こちらの会場は大好きな白鷺美術さんにて。香りの展示というイベントは初めてなので、どのような構成にすべきか思案中ですが、視覚的にも調香のプロセスを感じていただけたらと考えています。
イベント詳細はHPやSNS等にて随時お知らせいたします。
素晴らしい新月の一日を。
パフューマリー通信をご覧いただきありがとうございました。


