新学期が始まる時期、長くて暑い夏の終わりは充足感もあるけれど少し寂しさも相まって、秋の虫の音に心が重なります。今年の夏はいかがお過ごしでしたでしょうか。
ラヴェンダー
牡羊座からにわかに始まった星座と天然香料シリーズ。乙女座新月の今日、乙女座の象徴する植物としてご紹介するのはラヴェンダーです。知性と神経をつかさどる水星を支配星とし、乙女座は勤勉さ、誠実さ、手先の器用さ(収穫にはたくさんの道具を使うため)を表します。
語源はラテン語 lavo(洗う)から。古代ローマ人は沐浴や洗濯用にラヴェンダーを用いました。12世紀聖ヒルデガルドはラヴェンダーに創傷効果を認め、13世紀からはラヴェンダーの蒸留が始まり、古くから活用されていた精油のひとつ。アロマセラピーでは「もしたったひとつだけ精油を選ぶとしたらラヴェンダー」と言われるほど、ラヴェンダーには幅広い効能が備わります。切り傷、やけど、虫刺されなどの創傷治癒作用や傷跡形成作用、スキンケアの他、頭痛やストレス、不眠、抗うつ作用などの鎮痛・鎮静作用があります。また、作用や香りも穏やかなので、ベビーマッサージにも使われます(スイートアーモンドオイルに0.5%程度に希釈して使用)。
イギリスには13世紀にノルマン人によってもたらされ、16世紀エリザベス第1世が宮殿にハーブガーデンをつくり、ラヴェンダーはイギリス国民に親しまれる植物となりました。ラヴェンダー香水は長らく愛されてきた香水のひとつでしたが、20世紀以降ラヴェンダーによく似たラヴァンジンが発見されて以来、石鹸や洗剤に多用されたため、ラヴェンダーをファインフレグランスに使用する傾向は著しく縮退しています。
それでもラヴェンダーはアコードに重厚感や広がりを与え、個々の香料を結ぶ、調香の上で欠かせない役割を持ちます。ピュアで慎ましく、ロマンチックでありながら野性味のあるフローラル=ハーバルノート。主役にも名脇役にもなれる天然香料です。どんな香料とも調和し、ラヴェンダーのそんな器用さからも乙女座の要素を感じます。
1st Collection:クララ・シューマンに捧げる
1st Collection は勇敢な女性に捧げる自然香水シリーズです。9月13日は今年3作目として製作中のクララ・シューマン生誕日。クララ・シューマンは世界で初めて女性ピアニストとして活躍し、数々の素晴らしい作品を遺した音楽家です。19世紀当時、ピアノは上流社会の良家の子女がたしなみやお稽古で習い、発表する機会は貴族のサロンか娘時代に舞台に上がる程度、結婚後は引退するのが常でした。
今も仕事と家庭の両立は多くの女性が直面する問題のひとつですが、現代に生きるわたしたちが性別に阻まれることなく職業や生き方を選べる風潮は、クララのように静かな情熱を秘めて時代を切り拓いていった勇敢な女性たちが存在したからと感じています。
12月にクララに捧げる香水と音楽と朗読の会を企画しています。詳細は今後のパフューマリー通信やBlog/Instagramでも発信していきますので、ご確認いただけましたら嬉しいです。
9月の予定
9月16日(月・祝) 13時30分~15時30分
調香ワークショップ 残席1名様
9月16日(月・祝) 17時00分~18時30分
1001 Nights 小さなソワレ
パルファン1001 Nightsご購入様限定イベント
台風10号がようやく過ぎ去りました。
金沢にやって来る頃には温帯低気圧に変わっていましたが、皆様のお住まいの地域では影響や被害などありませんでしたでしょうか。
まだまだ日中は残暑が続きます。どうかくれぐれもご自愛ください。
BLISS
茂谷 あすか
Profile
1982年生まれ。幼い頃より自然を守りたいという思いを胸に高校卒業後渡英、環境学を学ぶ。2006年英国イーストアングリア大学卒業。株式会社QUICK、三井物産株式会社勤務を経て、2015年より調香の仕事を始める。2019年東京理科大学卒業。2021年石川県金沢市にてパフューマリーを設立。現在オーダーメイド・小ロットOEMの香水類・アロマ化粧品・フレグランスの製作を行う。